シルバー世代が生き生き働くホール
中高年がリストラの嵐に会う中、中高年が戦力として最前線で元気に働いているホールがある。社名は伏せるが、関西で16店舗を運営する中堅ホールだ。
このホールはパチンコのイメージを変えるために、29年前からいち早く主婦をパート社員として積極的に登用してきた。当時、主婦のパートタイムの時給が500円の時代に、昼間が750円、夜が950円。旦那が作った借金返済や、離婚してお金が必要な人たちが高額の時給につられ応募してきた。
パンチパーマの従業員がくわえタバコで表周りをしていた時代に、そのホールは主婦を戦力とすることに着目した。併せて新卒採用も業界の先鞭を切った。人材を人財と呼びはじめたのも業界ではこのホールが走りだった。
パチンコ不況が叫ばれる中、このホールのトップは「資産のリストラはやっても、人財のリストラは絶対にやらない」と宣言している。
このホールにはタイム社員番号1番の勤続29年になるタイム社員が今でも働いているほか、勤続25年を越え、還暦を過ぎてもカウンターでバリバリ働いているタイム社員が5人もいる。
最高齢は67歳。この人の目標は「70歳になってもカウンターで働くこと。カウンターで倒れて死んでもいい。それができたら本望」といいのける。
定年は60歳だが、本人が希望すれば1年契約で更新するシステムを執っている。
永年勤続者なればなるほど、「体が続く限りここで働きたい。こんないい会社を辞める人の気が知れない」と口を揃える。
還暦を越えたカウンターレディーの強味は、何といっても経験年数に裏打ちされたベテランの味だ。パチンコの中心客層はいまや団塊の世代以上。客からすれば同世代のカウンターレディーに親近感と安心感を感じる。
80歳を過ぎたおばあちゃんが毎日ホールに足を運ぶ。
理由を聞くと「毎日来ないと病気になったのかと心配するから」。これに対してカウンターレディーも「そう、毎日来ないとボケるからね」と応じる。
お年寄りにすれば、ここは第二のわが家のような存在になっている。
「あんたの顔を見ると安心する。あんたがいるからこの店に来る。絶対辞めといてな」とベテラン社員に付いているファンの数が稼働率につながっている。
影響力はそれだけではない。
「休み明けは仕事をするのが嬉しくて仕方ない。仕事する意欲があることはまだ、自分に可能性がある、ということ。年を取っているから役職者でも私のいうことを聞き入れてもらえる。だから年齢を重ねることが嬉しい」とポジティブな考え方は社員に対しても模範になっている。
人財のリストラは絶対やらない、という会社の想いがベテラン社員を戦力に変えているいる、ケースともいえる。