パチンコ業界に必要な5回のなぜ
「誰も知らないトヨタ」(片山修著)を読んでいて非常に参考になる箇所を発見した。
失敗した原因を探るためにトヨタには「5回のなぜ?」がある。5回のなぜを繰り返すことで、本当の原因を探り出す姿勢で、トヨタでは問題を引き起こす本当の原因を「真因」と呼んでいる。
例えば、作業中のロボットが突然止まった。
現場担当者はなぜ止まったかを調べる。これが最初のなぜだ。
調べるとヒューズが飛んでいた。ヒューズを取りかえるが、また、ヒューズが飛ぶ可能性があるので、ヒューズが飛んだ原因を調べる。
これが2回目のなぜだ。
ロボットのカバーを外して中を調べると潤滑油を送るオイルポンプがうまく動いておらず、潤滑油が回っていないことが分かった。
どうして、潤滑油が回らなかったかを調べるのが3回目のなぜだ。
ポンプの潤滑油が送られるところに切り粉が付着していることが分かった。切り粉が詰まってポンプがうまく作動していなかった。
この場合、エアクリーナーを使って切り粉を取り除くだけでは不十分だ。なぜ、切り粉がポンプに詰まったかを調べなければ、根本的解決にはならない。
これが4回目のなぜだ。
さらに原因を探ったところ、切り粉が入らないように設置されているフィルターが外れて、そこから切り粉がポンプに紛れ込み、ロボットは止まった。
このように、なぜを繰り返すことによって「真因」を見つけて解決する。
この場合の解決策は外れたフィルターを元通りにはめることだが、これでは問題が完全に解決されたわけではない。
何かの拍子に再びフィルターが外れる可能性がある。なぜ、フィルターが外れたか。
これが5回目のなぜだ。
ここで、フィルターが二度と外れないように、改善を提案して、同じ問題が起こらないようにする。
なぜを5回繰り返し、表層的原因から深層的原因を粘り強く突き止めていく。
これによって、組織体質が強化され、人も育つ。
パチンコ業界にもこの「5回のなぜ」が必要だ。
ダイコク電機が7月に発表した「DK-SIS白書2021年版」で、2020年の業界総売上は14.6兆円(対前年比マイナス5.4兆円)、業界総粗利は2.35兆円(同マイナス0.89兆円)となった。売上・粗利ともに前年比で27%減の大幅下落となった。これは集計開始以来最大の減少率となった。
遊技人口が下がり続ける「真因」を追求して、原因を改善していないからこうした事態を招くことになる。等価が悪い、機械代が高い、規制が厳しい、と色々原因があるにも関わらず、何ら手立てを打っていない。
業界団体が一つになって「5回のなぜ」を繰り返すことで、業界が衰退する「真因」を探って、緩やかでもいいからV字回復を望みたい。