パチンコ業界のライバルは複合カフェ?
お金と時間に余裕のあるシルバー層をターゲットにした「居場所提供ビジネス」が脚光を浴びている。しかし、本来、その役割を果たしていたのがパチンコホールだった。パチンコの場合、1円パチンコがあるとはいえ、毎日行くにはお金がかかり過ぎることがネックなことに加え、顔見知りだった仲間が鬼籍に入ることで1人消え、2人消えしていくうちに仲間がいなくなってホールに行くのを止めたおばあちゃんもいる。
行き場を失ったお年寄りが向かった先はゲーセンだった。去年辺りからその様子はメディアでも紹介されているので、ご存知の人も多いだろう。
実際、平日昼間のゲーセンは、子供たちの姿よりお年寄りの姿が目立つ。シンプルなメダル落しが人気で、1000円もあれば5~6時間暇が潰せるところがゲーセンの強味である。
シルバー層をターゲットとした戦略としては65歳以上でメダルを50枚サービスしたり、早朝サービスとして茶菓子を提供しているゲーセンもある。
お年寄りのために、ベンチを畳敷きにして皆で弁当を広げられるようにも配慮している。お年寄りは居場所に加え、何よりも話し相手を求めてやってくるので、ゲーセンの従業員も気さくに会話しながらの接客を心掛けている。ゲーセンでお年より同士が顔見知りになり、それが再来店動機にもなる。
居場所提供ビジネスをさらに先鋭化しているのが複合カフェ業界だ。ネットカフェも競争が激化する中で、未開拓だったシルバー層に完全にターゲットを絞り込んだ店舗展開を始めているチェーン店も出てきている。
そのうちの1社、自遊空間ではシニア割引として平日60歳以上の人には3時間500円、という料金を打ち出している。60歳以下の同伴者にもこの料金が適用される。複合カフェといえばコミックやインターネットが2本柱だが、シルバー層をターゲットにした店舗では囲碁、将棋、麻雀ルームのほか、カラオケボックスよりも、大勢の人が収容できるステージ付きの大きな部屋を設け、お客さん同士が触れ合い、友達になる場を提供している。友達が増えることによって再来店の動機になる。毎日でも来られるようにシニア割引を打ち出している。
少子高齢化でお年寄りが増えるのなら、お年寄りをターゲットにした余暇市場を開拓する中で、一つのキーワードとなっているのが「居場所提供」だ。
ゲーセン同様1000円あれば、半日時間を潰すことができる。
パチンコ業界には1円パチンコがあるが、等価の1円は釘が締まり遊べない。パチンコの醍醐味は勝ち負けがあることだが、そんなことに疲れたお年寄りがゲーセンや複合カフェに逃げ場を求めているのかもしれない。
高コスト体質からの脱却を図らないことには今、パチンコ業界を支えている中高年層もそのうち消えていく。50銭パチンコでも充分収益が出る体質にしていかないと、パチンコ店に居場所を求めるシルバー層はいなくなってしまいそうだ。いっそ、ホールとシルバー層をターゲットにした複合カフェを併設するのも一つの方法だ。