大相撲の八百長問題は対岸の火事ではない
1300年の歴史と伝統を誇る大相撲が八百長事件で窮地に立たされている。日本相撲協会はこれまで、八百長疑惑を書いた週刊誌を名誉毀損で訴え、裁判では勝ってきた。
今回は「メール」という動かぬ物証が出てきたことで、ようやく八百長があったことを認めた。しかし、放駒理事長は「過去においては一切なかったと認識している」と組織防衛のための苦しい答弁をした。
八百長を認めたことで、大阪場所の中止を決定したことは、大相撲史上最大の汚点を残すこととなった。
協会が全否定し続けてきた八百長問題は非常に根の深い問題である。かつてはわざと負けることを人情相撲といったが、八百長の語源は明治時代に遡る。八百屋の店主、長兵衛の通称、「八百長」に由来するもので、碁仲間の相撲の年寄りと打つ時、商売上の打算からわざと負けて、相手のご機嫌取りをしていた。これが語源となって相撲界ではわざと負けることを八百長と呼ぶようになった。
八百長がはびこる背景には実力社会の給金制度にある。十両に昇進してからは月給103万円が支給されるが、十両以下だとほぼ無給に近い。まさに天国と地獄ほどの格差がある。それはハングリー精神を養うため、ともいわれているが、十両を陥落すると再び無給の生活に逆戻りする。十両の地位を守るために八百長は相撲界では暗黙の了解のもとに行われていたようだ。
加えて、年6場所をガチンコで勝負すると、怪我をする。今は公傷制度が廃止されているのでできるだけ怪我をしたくない。そうなると星の売買が必要になってくる。
根が深い八百長を完全に断ちきることは、容易ではない。
大相撲の八百長問題が発覚したのとほぼ同時期にスロット業界にも激震が走った。元スロット販社の社長らがメーカーを訴える記者会見のビデオがネットで流れた。
それによると、メーカー主導の下に、販社が裏ロムを仕込み機械を販売していた、というもので、裏モノの仕込み方まで克明に説明していた。7年ほど前の話で、機械自体もホールには設置されていないので、事件としては立件できない。
これに対してメーカーはビデオを流した首謀者を業務上横領罪で刑事告訴している相手とし、「パチンコ業界における当社の風評被害を狙った事実無根の誹謗中傷」と反論するFAXを流した。
八百長と裏モノに共通することは、関係者なら誰もがその存在を知っている、ということ。
公然の秘密が明らかになったことで、大相撲は八百長体質から脱却できなければいつまで経っても本場所の開催はできない。
一方のスロットに対しても不正の歴史から警察庁の心証は決していいものではなかった。スロット4号機の爆裂機は、メーカーがサブ基盤にギャンブル性を忍ばせて、保通協検査の目をかいくぐった警察“公認”の賭博機であった。
裏モノの出番がいらないぐらい、表の機械の連チャン性でスロット市場が拡大した。
この時、警察庁上層部の中には「スロットなんかなくしてしまえ」と考える者もいた、ともいわれているが、担当官が「規制を強化する」と説得してスロットは生き残った。
昔の話とはいえ、裏モノを仕込んでいた暴露話は、スロット廃止論を蒸し返すことにもなりかねない。
パチンコにしてもいつまで経ってもMAX機タイプの開発一辺倒で、これまた警察庁の心証はよくない。メーカーは機械を売らんがするために、射幸性の高い機械ばかりを開発する。射幸性ばかりを追求するから客離れも起こる。
おりしも「パチンコがなくなる日」(POKKA吉田著)という衝撃的なタイトルの業界本が上梓された。