常に「考える」人材を育てる
ビジョナリーカンパニーとしても注目されている岐阜県の未来工業が、東日本大震災の被災地へ1億円の義援金を贈ったことが話題になっている。
注目されているのは、1億円の金額の多寡ではない。この1億円は5年に1度、全額会社負担で行われている海外旅行の費用なのだが、社員から「旅行を止めて義援金に回そう」という声が上がって寄付することになった。会社が中止を決めたのではなく、社員から中止の声が上がったところが注目されている。
5年に1度の社員旅行だから、社員は楽しみにしている。旅行中に出題されたクイズに正解すると「1年分の有給休暇」がもらえることでも話題になった。
未来工業は名証2部上場の電設資材メーカーだ。コンセントのボックスを作っている会社で、そのボックスでは全国80%のシェアを持っている。
この会社にはタイムカードもなければ、ノルマもない。年間休日は140日。年末年始は19連休。勤務時間は8時30分から4時45分まで。残業は一切なし。残業すると「電気代がもったいない。早く帰れ」と怒られる。
給料体系も成果主義ではなく、年功序列。定年は70歳まで引き上げた。
一般の会社では極々当たり前のホウ・レン・ソウにしても、社長は「そんなものはポパイに食わせておけ」と歯牙にもかけない。
社員数は約800人。平均年収は600万円。女性社員300人を含めた平均年収だから、かなり高額である。
ノルマもなければタイムカードもない。おまけに年間140日も休日があって、サボる社員が出てくるのではないか、と心配されるところだが、「こんないい職場を壊したくない」と自らが働く職場環境になっている。
この会社のモットーは「常に考える」。
「考えましょう」と「考える」では受動的と能動的の違いがある。常に能動的に考えるクセを付けさせることで、自らが解決策を見出せる能力が養われていっている。だからホウ・レン・ソウも必要ない、ということだ。
コンセントのボックスの中には小さな創意工夫が詰まっている。だから他社が追従できない商品力となっている。
「考える」クセを付けるためのアメはある。改善提案にはどんなものでも500円が支払われる。いい改善提案には最高3万円が支払われる。かといって鞭はない。
自分たちで考えた結果が、海外旅行を中止してその費用1億円を義援金として寄付することだった。
アメリカからの能力主義、成果報酬型経営を取り入れるようになって、日本の企業は弱体化して行った面もある。
未来工業の平均勤続年数は17年。平均年齢は42歳。帰属意識、愛社精神の高さなどの日本型経営のよさが未来工業には残っている。
パチンコ業界でもこの社風や改善提案制度などを取り入れて、自ら「考える」社員を育ててみてはどうだろうか。
集客をむやみに機械に頼るのではなく、頭を使って集客できる人材が育つはずだ。