こだわりの仕事とプラス1の付加価値で繁盛する喫茶店
外資系のコーヒーショップの台頭により、街中の個人で経営している喫茶店がどんどん閉店する中で、頑張っている喫茶店がある。大阪・堺市の「珈夢亭(こむてい)」がそれ。コーヒー豆の販売のほか、百貨店内でもコーヒーショップを11店舗運営しているが、8年前にオープンした「珈夢亭」は、パチンコだけでなく、あらゆるサービス業のヒントになることが満載されている。
一歩、店内に入ると喫茶店なのに、広い店内には輸入食材やワインから地元のパンや和菓子、鍋の具材までが整然と並んでいる。
「コーヒー豆のほか、輸入缶詰やワインも百貨店に卸していたので、それを店に並べていったらどんどん商品が増えてきた。ここは喫茶店ではなく地元のコミュニティーの場として、皆さんが寛げる場にしたかった」と語るのは園田高久統括部長。
経営のコンセプトは「プラス1」。何か1つ加える。一例を挙げればコーヒーに和菓子を一品つけた和菓子セット(500円)がそれ。コーヒーにケーキは当たり前すぎて面白くない。堺市には和菓子の名店が数多くある。そこで地元の和菓子を取り寄せてセットにすることを思いついた。
「コーヒーに餡子の迷いはありませんでした。こういう立地の路面店の喫茶店は、地元のお客様に来ていただく地域密着型を心がけなければなりません。地元密着を目指すのであれば、和菓子も地元のものを扱うことにしました。うちのお客様は年齢層が高いので和菓子をセットにしたところ、年配のご婦人には大変好評をいただいています」
本業のコーヒーにも、もちろんこだわりがある。外資系チェーンの様にあらかじめ大量に作り置くのではなく注文を聞いて1杯ずつコーヒーを点てる。何よりもコーヒーの命は水である。水が美味しくなければ、コーヒーも美味しくない。美味しい水を求めて全国を探し回った結果、たどり着いたのが北海道・羊蹄山の湧き水だった。
「羊蹄山の水はまろやかな軟水です。水の個性が弱い分、コーヒーの個性を引き立ててくれます。硬水はモカとキリマンジャロの違いが分かりにくいのですが、羊蹄山の水はその違いを理解しやすい」
北海道から運んでいるので水のコストは当然高くなる。同社はギフト用にアイスコーヒーも販売している。大手飲料メーカーのアイスコーヒーが3000円で7本セットに対して、同社は3本。百貨店でお中元用に販売したところ、売れたのは3本セットの方だった。贈り物の場合は、普段飲めないようなものを贈りたい、という心理が働くからだ。
コーヒーの味を左右するのが水なら、パチンコでは釘だ。こだわりを持ってストレスを感じないないような釘調整をどこまでやっているか。
喫茶店に例えるなら、水道水を使って大量に作り置きしてして風味もないコーヒーを出しているのが、稼働を落としているホールであろう。
和菓子セットが注目され、堺市の観光ガイドにも載るようになり、観光バスの団体客が訪れることもある。
「わざわざ来ていただくのだから、一杯のコーヒーにもプラス1の価値が必要になってくる。これからの喫茶店はこだわりがないと生き残ってはいけない」
こだわりを持って仕事すると共に、プラス1の付加価値を付けること。ホール運営にも是非取り入れたいサービス哲学でもある。