エンドユーザーを増やすための機械メーカー
「パチンコの原点は4円。おカネのかかりすぎる4円パチンコに疲弊したファンの受け皿となったのが1円パチンコ。業界の先人たちが何十年もかけてパチンコの貸し玉料金を1玉4円にした歴史を振り返れば1円パチンコは邪道。4円で遊べる機械を作ればいいわけで、それは甘デジではなく、一番求められるのはメーカーが20万円以下の機械代を提供すること」と断言するのはある遊技機メーカーの社長。
フィーバーブーム後、業界が一番潤っていた時代の機械代は20万円前後だった。液晶の大型化や版権モノとのタイアップ機の登場により、今や機械代は40万円にまで跳ね上がった。
1日の台粗利が5000円として、40万円の機械代を償却するのに80日かかる。最近リリースされる新機種で3カ月以上使える機械が何機種あるか。期待のビッグタイトルであるエヴァとギンパラの2機種がものの見事にこけてしまった。それに対してメーカーが責任を取るわけでもない。
ホールは回収を焦るばかりに釘を閉める。そのツケを最終的に支払わせるのはエンドユーザー。パチンコ代で疲弊した客のパチンコ離れが加速し、業界規模を縮小させる負のスパイラルに陥っている。
ここで機械代の高騰が招く悪循環を断ち切らなければ、パチンコ業界の未来はない。
「エンドユーザーがいなければ業界は存続しない。ユーザーを呼び戻すための新しいビジネスモデルは、メーカーが生まれ変わらなければならない。機械代が20万円以下ならホールも健全経営ができる」と力説する。
同社から発売された1号機は、昔ながらの普通機だった。価格は14万円8000円。爆発的に売れる機種ではないが、導入したホールでは確実に利益を出している。普通機のいいところは機械寿命が長いので売上げは少なくても充分に元が取れること。
普通機以外のセブン機でも機械代を20万円以下に抑えたものを提供すれば、エンドユーザーの懐を痛めず、ホールも潤う営業が可能になってくる。
同社の社長は、以前はホール経営者だった。ホールで困っている閉店清掃の会社を立ち上げたり、業界で初めてキャラクターを使ったパチンコ専用景品を開発したりしてきた。そして、機械メーカーを立ち上げ、紆余曲折の中でパチンコ機の発売にこぎつけた。
「エンドユーザーを増やし、業界貢献度ナンバー1企業になりたい。誰かが今の悪循環を断ち切らなければならない。そのために機械を安く提供するバカが一人ぐらいいてもいい。苦しいホールのために、今やらなければいつやのかる。機械の価格破壊を起こす切り込み隊長になりたい」と熱く語る。
社長が目指すのは、ホール企業によるホールのための機械メーカー。そのためには、ホールの協力がなければその夢は実現しない。