ドキュメント72時間で取り上げられたホールが全国に増えれば業界は変わる
6月8日に放送されたNHKのドキュメント72時間「1円パチンコに哀歓あり」で、定点観測の舞台となったのは宮城・東松島市の「まるたま石巻店」(竹田隆社長)だった。
ホールに集う人たちの日常に迫る内容で、パチンコを打つ理由は人それぞれ。仕事をリタイアした人たちは、時間はたっぷりあるものの、家には居場所がない。そんな人たちの受け皿となっている。
シングルファザーで生後8カ月から子供を育てながら、仕事と家事をこなす30代の男性は、障害を持った子供が中学生になった。子供を寝かしつけてから夜10時からの1時間が唯一の息抜きだったりする。
番組を観た人の声をいくつか紹介しよう。
「アンチのパチンコバッシングが多い中、こういうパチンコの意義、役割をお客さん目線で発信するのはいいですね。番組の中で“無”になれるという言葉がありますが、たしかにパチンコにはそういう側面はあります」
「これは良い番組だと思った。こういう楽しみ方なら大アリではないでしょうか。アンチもこういうパチンコの側面まで叩いてる人は滅多にいない」
「僕もこんな風なパチンコ店経営してみたい。しかも客層はお年寄りのみ限定。憩いの場所を提供させていただきたいんだよね。そしてお一人様あたり1日500円だけ頂戴させてもらう。40玉に7枚交換で波が穏やかな機械ばかりなら薄利で営業って可能なのかしら?300台クラスの店を朝からお客さんで満タンにしたいのよね」
「レジャーとしてのパチンコの原点、本来の役割を果たしているのだと思います。ちなみにこちらのお店は、新台入替は地域で最も少ないながら、稼働率が最も高いですよ」
「いこいという名のホールがまた消えていく中で、こういうのもまた良いですね」
依存症問題がクローズアップされる中、今のパチンコイメージは決して良いものではない。そういう状況の中で、この番組はパチンコの見方がちょっと変わるような内容で、業界にとっても一服の清涼剤ともなった。
それは竹田社長の経営方針が見事に映し出された結果でもあった。
竹田社長は4号機全盛時代、余りの爆裂性から強制撤去になった対象機を頑なまでに自店には導入しなかった。
稼働、売り上げともに上がり、大半のホールは競うように導入したが、「ああいう機械は業界にあってはならない」という竹田社長の信念があった。
「お客さんが減り続けている理由は、おカネがかかり過ぎるようになって通えなくなった。メーカーの営業マンもホールの店長も、そんなに給料をもらっていないので、打てない。自分たちがやれないものを提供し続けているのだから、減るのは当たり前。短時間で消費金額がかかる遊びを今の若者がやるわけがない。演出過多でしかも演出は裏切ることばかり。止め時を与えず、ずっと打たせようとする機械作りでは未来がない。ただ、おカネも時間もあり、遊びたい中高年はもっと分かりやすく、消費金額がかからない機械にすれば呼び戻せる」(同)
パチンコは大衆娯楽であり、遊技であるという営業形態を実直なまでに押し通している。多くのオーナーが竹田社長のような考え方を持てば、新規客の開拓も可能で、業界の未来は明るいものになってくる。