パチンコ業界にも静かに浸透する香りマーケティング
昨年末、東京・銀座にオープンした「Abercrombie & Fitch」(通称アバクロ)。デイヴィット・ベッカムやブリトニー・スピアーズなどの海外のセレブが愛用しているアメカジファッションの店で、若干高目の価格帯ながら日本では30~40代のファンが多い。
同社はマスコミ取材を一切受け付けないだけでなく、においで集客させる「香りマーケティング」をいち早く導入して成功している店舗としても有名だ。
店内にはオリジナルの香りが流れ、「この匂いが好きだからこの店に行きたくなる」という人も少なくない。オープニング時にはアドトラックがアバクロの匂いを流しながら街中を走った。香りを使って記憶に残し、それを引き出すことにより、より効果的な集客を図る狙いだ。
深く静かに広がるこの香りマーケティングをNHKのクローズアツプ現代が「広がるにおいビジネス」として紹介した。
この中でパチンコ業界として興味深いのがアメリカ・シカゴのアラン・ハーシュ博士(嗅覚味覚療法研究財団)が15年前にカジノで行った匂いの大規模実験だ。カジノでAとBの違う匂いを流した。この2種類の匂いでどれだけ滞留時間に差が生まれるか、という実験だった。
実験の結果、Aという匂いでは、スロット客の滞留時間が長くなり、売り上げが53.4%上がった。ちなみにBという匂いでは18.7%のアップだった。
ハーシュ博士はこの実験結果に対して「人々は匂いによって、リラックスし、もっとその場にいたいと感じた。カジノでは滞在時間が長くなるほどお金を使ってもらえる。10分でも長居してもらえば、売り上げは大幅に上がる」との見解を示した。
この実験で売り上げ大幅に上がったAが柑橘系の香りだった。居心地がよくなり、気分が高揚して、ついつい長いしたくなる効果があることが実証された。
番組ではこのアメリカのカジノで使われている匂いを採用している業界としてマルハンが紹介された。
短く編集されたインタビューで韓副社長は「われわれはエンターテインメントビジネスなので、お客様が入場したときにまず、高揚感を高めていただきたい」と答えている。現在マルハンでは70店舗ほどに採用されている。
テレビで放映される以前からパチンコ業界でもこの香りマーケティングを取り入れているホールは、マルハン以外にも何店舗か導入されていた。
この商品を取り扱う会社には放送後、問い合わせが殺到した、という。
大型設備ではないが、モノが動くということは業界にとっても明るい材料だ。