不惑の年を迎え再就職したホールで良かった
東北地方で外壁塗装工事の営業マンをしていたA(39歳)さんは、業績不振から会社をリストラにあった。次の就職先のつなぎのつもりで、福島第一原発のがれき撤去作業員の面接を受けた。ところが、結果的に面接を落ちることになる。理由はAさんの年齢にあった。
39歳といえば、まだまだ働き盛りである。体力にも自信はあった。現場作業で知力は要求されない。それなのにナゼ落とされたのか、疑問が湧いてきたがすぐに氷解する。
面接官はこんな質問をしてきた。
「奥さんは、いらっしゃいますか?」
「お子さんは、いらっしゃいますか?」
Aさんは結婚しているが子供はいなかった。
「まだ子供を作る人にはリスクがあります。うちは45歳以上で、今後子供を作らない人を採用しています」
防護服を着ているとはいえ、放射能が出ている現場で働くことは、遺伝子に影響を及ぼし、奇形児が生まれる可能性も出てくるからのようだ。
そして、面接官はこういった。
「廃炉作業は、まだまだ40年も50年も続く仕事なので、いつでもチャンスはありますよ。その時にまた来てください」
日当は会社や作業する場所によって違うが3~5万円といわれている。契約期間は3カ月から半年。給料が高いということはそれなりのリスクが高いことは分かるが、子供を作る予定がある人は採用しない、というのはある一面ではビビる。
で、Aさんが次に向かったのが地元の中小ホールだった。ホールは5店舗。ここでめでたくアルバイトで採用され、仕事ぶりを見て契約社員となった。
契約社員になる時にホール側からはこう釘を刺された。
「経験と年齢から幹部社員になることはない。ただ、主任には努力するば5年ぐらいでなれる」
Aさんはパチンコ好きで、パチンコはよくやっていたが、まさか自分がホールで働く姿などそれまで想像したことがなかった。
客として見ていたパチンコ業界と自分が実際に働く業界にはギャップがあった。
「前職は社内の人間関係もギスギスしていたが、上司も含め働いている人はいい人ばかり。こんなに人に優しい業界だとは思ってもみなかった。パチンコ業界に転職して本当によかった。契約社員の次は正社員になれるように頑張る」
一時は、つなぎとはいえ、子供も作れないような放射能環境の下で働こうとした。そこを断られてパチンコ業界へ転職することになったわけだが、第二の人生の再出発が図れるのがパチンコ業界でもある。