優秀な人材を採るための高額初任給作戦の結果
フィーバーブームで業界参入した会社はたくさんあるが、業界が縮小傾向にある中、今でも業績が好調なホール企業となると数は少ない。
紹介するホール企業は、その数少ない事例だ。店舗数は30店舗あまりの中堅どころ。地方で30店舗といえば最大手にもなるほどの店舗数だ。
会社を創業して30年以上経つが、創業当時から初任給が高いことで知られていた。1号店を出店した時は、ズブの素人だった。サービス産業の経験もなかったが、それでもフィーバーブームで、機械が勝手に稼いでくれた時代だった。
しかし、いずれ、過当競争時代が到来することは予見できたので、早くから人材での差別化に着手した。
そこで、打ち出したのが28万5000円、という高額の初任給だった。これは様々な業界の第一線で活躍していた人材を採ることが目的だった。パチンコ業界人だけの発想では、いずれ限界が来ることを見越していた。業界人の常識にとらわれない柔軟な発想を業界外の人材に期待した。
自動車ディーラー出身で店長に昇格した人は、店長に就任した途端、ホールの近くの家々を「今度○○○の店長になった○○です」と名刺を持ってあいさつ回りした。車のセールスマンなら当たり前の行動だった。
今でこそ、グランドオープン時にドアノックコールをするホールもあるが、20年以上前のパチンコ業界では、戸別訪問してあいさつする、ということは業界の非常識だった。
高額初任給効果から、東京6大学出身者も入社するようになった。バイトの時給も20年以上前から1500円、と高額を支給していた。バイトは3年契約で、満期まで働くと辞める時に、100万円のボーナスが支給された。契約期間を満了しても働きたい人は、一旦、100万円をもらって再契約することもできた。
従って、バイトから正社員になる人も多く、9割が正社員で、1割がアルバイト、という一般のホール企業とは真逆の正社員比率となっている。
正社員にする分、人件費が高コスト体質になるデメリットはあるが、優秀な人材が定着するために、それを十分カバーするだけのメリットがある。
実際、アルバイト主体で運営すると最近は特に人手不足でなかなか人が集まらないために、求人コストが高くなっている、というデメリットがある。
外部から入って来た新しい血を注入しながら、独自の店舗づくりを進めてきた。人材が十分に育ってから出店する堅実派で、かつ無借金経営のために無理な営業をする必要もない。1店舗ずつの店舗力が強いのは、そのような背景がある。