夢を追いかけるチャレンジ精神
企業スポーツが不況のあおりで休部や廃部に追い込まれる中、あえて社会人野球チームを創部したホール企業がある。今春より本格的に始動する。中部地区を拠点に店舗数は16店舗。売り上げは640億、社員数は550人。パチンコ業界では中堅クラスの規模である。同社の野球部が加わることで、パチンコ業界からはセガサミー、伯和グループに次いで3つめの社会人野球チームが発足することになった。
創部の目的は都市対抗野球で優勝して、ホール企業の知名度を挙げることだ。知名度が上がることで優秀な人材の確保も視野に入れている。そのために都市対抗野球では優勝経験のある名門企業の監督を招聘。コーチも全日本アマチュア野球連盟経験者で固めた。メンバーは甲子園経験者など21人が集まった。
企業スポーツは日常の業務をこなしながら、夕方から練習に入る。野球だけをやっていればいいわけではない。そこがプロとの違いで、給与も一般社員と同じレベルである。
当然ホール企業なので、野球部の部員が普段はホールの表周りをしながら接客業にも励む。肉体的にも精神的にも鍛錬している部員がホールスタッフとして働くことで、職場に新たな風が吹くことも期待されている。
野球部員は職場の同僚であり、職場の代表として都市対抗野球を目指す。そこで職場のチームワーク、一体感、帰属意識が生まれれば、なお一層野球部の存在意義も高まる。
野球部を通じて知名度を上げること以外にも目的はある。それは夢を追いかけるチャレンジ精神だ。野球部が都市対抗で優勝する、という夢に向かって、働きながら練習する姿を社員に見せることで、職場のモチベーションが上がれば、願ったり叶ったりである。
日本でも名だたる大手企業が長引く不況を理由にスポーツ活動から撤退している。ざっと見渡しただけでもバレーボールでは、日立、新日鉄、ユニチカ、ダイエー、コスモ石油、住友金属工業、小田急電鉄。野球では、プリンスホテル、日産車体京都、中山製鋼、小西酒造、北陸銀行、大昭和製紙北海道、ニコニコドー。陸上では、九州産交、ニコニコドー、東邦生命保険、大和ハウス工業、ダイエー、神戸製鋼所。バスケットではジャパンエナジー、住友金属工業、東芝、日本通運、NKK、と錚々たる企業ばかりである。
スポーツ活動から撤退したとはいえ、これらの企業に比べると当該ホール企業は、規模的には野球部を持つようなレベルではない。それでも野球部を持つ決断した社長には夢がある。会社を興して25年、県下では最強のホール企業になることで業界の地位を固め、1000億企業になることである。それは店舗数が2~3店舗のころから言い続けていることでもある。まさに有言実行タイプの社長である。
業界でも全国的な知名度がないホール企業が、地方から出てくることに一つの意義がある。そこにパチンコ業界の底力を感じさせる。