換金が停止されても営業を続けるホールの真意
2月のクルーズ船ダイアモンドプリンセス号の船内感染から本格的に始まった連日のコロナ報道は収束するまで続くことだろう。緊急事態宣言が発令されてからはパチンコホールも休業要請の対象業種となった。大手が率先して休業したことで追従するホールが続出したことから、休業要請が出た都道府県では約7割が休業している。
それでも営業しているホールはあるわけで、西村経済再生担当大臣は4月21日、休業要請に応じないパチンコ店は施設名を公表する、と警告を鳴らした。大阪府の吉村知事は24日、全国に先駆け営業中のホール名を公表した。
こうならないために休業を徹底させたのが大阪府遊技業協同組合(大遊協)だった。4月7日、7都府県に緊急事態宣言が発令された時点で、大遊協は全国に先駆け組合員に休業を要請する文書を発出した。他の組合は感染防止に十分注意して営業することを求めるに留まっていたので異彩を放った。
さらに13日、大阪府が具体的にパチンコ店に対しても休業要請を出すと、すぐに大遊協は二度目の通達文を流し、強く休業を求めた。
これによって大阪では約8割のホールが休業に協力したが、この時点では2割が営業を続ける意思を示した。そこで大遊協が取った行動が驚くべきものだった。
特殊景品を集配送する大和産業が従業員をコロナ感染から守るために業務を停止したとして、18日から事実上換金が行えない措置を取ったのであった。特殊景品がなければホールは営業しても意味がないので、渋々休業せざるを得ない状態に追い込まれた。
これで大遊協加盟のホールは100%休業に協力すると思いきや、特殊景品がなくても営業を続けるホールが出てきた。
当該ホールの関係者に取材した。すると意外な答えが返ってきた。
「16日にオーナーとも話し合って休業(廃業)する方向で進めていました。われわれはスタッフの人生を預かっている。ここで最後に社員・アルバイトの声を聴くために全員にヒアリングしました。みんな生活がある。営業を止めると家賃も払えない子やシングルマザーで頑張っている子もいたりで、営業を続けて欲しい、という声が圧倒的だったの営業を続けることにしました」
営業は一般景品と貯玉対応。入口は1カ所にして店頭に従業員を立たせ、入口で特殊景品とは交換できない、と事情説明して納得してくれた人に入店してもらっている。
この店舗は4パチ、20スロのみで低貸し営業は行っていない。しかも、台移動、出玉共有はなしを貫いている。換金ができない状態でも1割ほどの稼働はあり、トントンの営業を続けている。低貸しなら営業は続けていなかった、と思われる。
「在庫を抱えない日銭商売は、カネが回らなくなったら途端に弱い。われわれ弱小ホールは1カ月も休めば廃業の危機に晒されています」(当該ホール関係者)
国からの補償もないままに、従業員の生活を守るための営業継続の選択肢を非難することは簡単だが、当事者となった時にどんな判断ができるかだ。
結局、このホールも大阪府から施設名が公表される直前に休業に入った。