新型コロナワクチンの職域接種をホールで実施した大阪・フリーダムの英断
パチンコ店を接種会場とした新型コロナワクチンの職域接種が9月13日、大阪市北区の「フリーダム」(平川順基社長)で行われた。パチンコ業界でも組合やホールが職域接種を行っているが、接種会場がパチンコ店内になるのは初めてのことだ。
なぜ、パチンコ店でワクチン接種なのか? この疑問に平川社長はこう明快に答える。
「大阪で始まった大規模接種会場は、なかなか人が集まらなかった中で、職域接種が始まりました。パチンコ店は駅前で立地もいい。店内換気が優れているのでクラスターも発生していない。ワクチンの接種会場としては打ってつけだと思いました。それで当社でも職域接種を検討することになり、すぐに厚労省に問い合わせました」
職域接種と言えば、問診する医師や注射の打ち手となる看護師を確保しなければならないため、必然的に産業医を抱える大企業や大学に限られてくる。パチンコホールが職域接種に手を挙げたところで、ネックになるのはここ。
昨年新型コロナウイルスが発生し、4月に第1回目の緊急事態宣言が発令された時、コロナ患者を受け入れる病院では医療用ガウンなどが不足する事態に陥っていることが報道され、大阪市の松井一郎市長は代用品として府民に雨合羽の提供を呼び掛けたほどだ。
同社では開業当初から余り玉やメダルの募金箱を設け、社会貢献活動に役立てていた。このニュースに触れ、新型コロナウイルス患者を受け入れている地元の私立総合病院へ問い合わせたところ、ガウンや手袋、マスクなど医療用物資が不足していることを聞きつけた。
そこで募金箱を活用して、マスク2万6000枚、医療用ガウン1万8000枚、医療用手袋10万枚を当該病院へ寄付することができた。
この時のパイプをきっかけに、同病院の協力の下に職域接種することが可能となり、1500人分のワクチンを確保することができた。1回目の接種を9月13日、14日、2回目の接種を10月12日、13日に実施する運びとなった。
接種対象者はグループ企業や取引先の従業員と家族、近隣の商店街関係者の他、ホール会員など。8月17日からの受付告知は店内ポップやDM、Twitterが使われた。受付はホールカウンターで行われ、ネットニュースで取り上げられた翌日は、行列ができた。9月12日の受け付け締め切り日を待たずして8月26日までに予約は埋まった。1500名中、約半数がホール会員となった。
接種方法はパチンコ島4島を片側だけ使い、ワクチン接種者は1台おきに座って待機。キャスター付きの椅子に座った看護師が注射を打ちながら移動していくので効率よく接種が進んだ。接種した後は、経過観察のためにホールスタッフが呼び出しランプのタイマー機能を15分にセットして、体に異変がなければ終了となった。
第1回目の接種は、当日と14日、第2回目の接種は10月12日、13日で、店は4日間休むことになる。
平川社長は「当社は20~30代をターゲットにした店づくりをしてきているので、特に若い方にワクチンを打っていただきたい。接種のために4日間店を休むことになりますが、社会的課題に取り組む姿勢を示すことが必要で、そういう輪がパチンコ業界に広まって欲しいですね」と話す。