業界で働くことに誇りを持たせるのは業界の責務
数年前の話だが、時代が変わろうとも基本は変わらないので読み進んでいただこう。
社内の教育改革にトップが自ら取り組むようになって1年半が過した。
地域ではソコソコに稼働が高く、地域一番店も何店舗かはあった。ところが従業員の接客レベルはお世辞にも誉められたものではなかった。
全体的に覇気がなく、「玉箱を運ぶ時に、玉をこぼしても謝りもしなければ、拾おうともしない」(常連客)
誰もが玉1個の価値を理解していなかった。
ぱちんこ情熱リーグには初回から参加していたが、こんなレベルだから3年連続で1次予選敗退だった。当然の結果といえよう。
何よりもショッキングだったことは、参加店舗の点数が平均点以下だったことだ。接客に関しては「できていない」現実を第三者から突き付けられた恰好だった。
覆面調査によると、最低限行われていなければならない明るい笑顔の接客もまるでできていなかった。
この無様な負け方にトップが奮い立った。それが社内の教育改革だった。トップ自らが研修を受け、多くの気づきを学んだ。
経営理念やトップの考えを組織に落とし込む教育を1年間に亘って実施した。この間、接客向上プロジェクトをスタートさせた。
これは現場でお客さんに接する全スタッフの接客レベルを上げることが目的で、このプロジェクトを推進するのは、各店舗から選出されたアルバイトリーダーたちだった。
会社は接客に関しては全権を彼らに委譲した。
接客の前段として身だしなみの服務規定も見直した。これまでは個人の主観による曖昧さがあったので、髪の毛の色や長さ、爪の色まで、プロジェクトチームが話し合って決めた。
アルバイトスタッフの髪の毛の色が黒に近づいて行ったのはその成果だった。接客に関しては16のチェック項目を「できた」「できない」で自己採点して行くと共に、アルバイトリーダーが全店のチェックを行い、改善点を話し合った。
これを半年間続けた結果、接客レベルは格段の差となってレベルが飛躍的にアップした。
どのスタッフも自然な笑顔がこぼれる。口角を思いっきり上げた不自然な作り笑いではないので、明るく、爽やかなスタッフを見ているだけでお客さんの方も自然と顔が和んでいる。
4回目となった情熱リーグの挑戦では、参加店舗が高得点をたたき出し、同社だけでなく、情熱リーグに参加している店舗からも驚きの声が挙がり、現地に視察にいくホールも少なくなかった。
店舗内にはアルバイトスタッフがモデルとなった大判のポスターが貼り出されている。
プロに写真を撮ってもらっているので、モデルかと見まごう。非常にクオリティーが高く、好感度の高いポスターに仕上がっている。
このポスターを同社のイメージ広告に提案したのだが、全スタッフから拒否されてしまった。
理由は店内限定のポスターまではいいが、それが外部に出るのはNGとなってしまった。
胸を張って「パチンコ店で働いている」といえない現実がそこにはあった。
パチンコ店で働くことに誇りが持てるようにするのは、会社の役目であり、業界の役目である。
業界で働くことに誇りが持てるようにすることは、業界の責務でもある。