真っ白いタオルの心
コロナ禍前にこんなサービスを行っていたホールがあった。
清潔感を全面的にアピールするために、全スタッフに除菌消臭スプレーを携帯させ、お客さんが入れ替わると即座に、ハンドルと上下の皿にスプレーをかけ、真っ白いタオルでひと拭きする。
一度使ったタオルはすぐに洗濯に出す。
汚れたタオルで拭かれたのでは、せっかくのサービスが逆にイメージダウンにつながる。
ハンドルは人の手の油でべたつくもので、このサービスは非常に喜ばれるようになった。
これ以外に、地域に貢献するホールを目指した。
ホールにはパチンコ感謝デーであまった景品や、お客さんがもらっても捨てる菓子やチョコレートがある。これを何かに役立てないか、と考えた。
市役所に相談に行くと、「当市には困っている施設はありません」と門前払いだった。
ホールの近くに授産施設があることは分かっていた。施設が祭りを開催する時は、寄付を求めてホールにも来ていた。
毎年1万円ほど袋に入れていた。そこで、年に1度の1万円の付き合いではなく、恒常的な付き合いを考えた。
企画の主旨を書いて「近くの授産施設に贈りたい」とホールのカウンター横に端玉景品の菓子やチョコレートを客から寄付してもらうために透明のでっかいボックスを作った。
段ボール箱に3箱貯まったところで、施設に届けた。もちろん、賞味期限はちゃんと確認して。
思いがけないプレゼントに喜ばれたのはいうまでもない。
2度目に届けに行ったとき、前回届けた段ボール箱に子供たちが「おいしかったよ。ありがとう」と書いているのを発見した。
それを切り取り、ホールに張り出すと、貯まるスピードが増した。わざわざ、お菓子に交換してそれをそのままボックスに入れてくれるお客さんも現れるようになった。
施設はお菓子で溢れるようになった。
ある時「こんなことをしてもらっているのはうちだけですか? よその施設にも回したいのですがいいですか?」
「もちろんいいですよ。市役所で聞いても門前払いだったので、ほかの施設のことを知りませんでした」
こうして、ホールの善意の輪は、地域の授産施設にどんどん広がっていった。
地域に愛されるホールの根底には、「真っ白いタオルの心」が原動力になっていた。