経営者の質が問われる時代
10数年前ホール企業が会社を分割した。屋号はそのままなのでチェーン店と思っているユーザーも少なくないが、経営は全くの別物だ。
話を分かりやすくするために本家をA社。分家をB社としよう。
本家はオーナーの息子が社長を継ぎ、分家は娘婿が社長となった。分社化した時点では、店舗数は平等に分けていたが、この10数年間の間に店舗数と売り上げではA社の倍の数字を叩きだしているのがB社だ。
分社化する前から娘婿の能力は長けていた。前職は学校の先生で、数字にも強かった。その能力が会社を躍進させた。しかし、所詮は娘婿。オーナーの息子の年収の半分ぐらいしか得られていなかった。そんなことが分社化の引き金にもなった。
A社は正社員よりもアルバイトの比率が高いのに対して、B社は8割が正社員で占められている。この辺にも経営方針の違いが出ている。
社員のレベルにもその違いが色濃く反映されている。
“事件”はA社で起こった。平の正社員がアルバイト社員の女の子を好きになり、猛烈にアタックをしてきた。社内恋愛が禁止されているわけではないが、女の子は困り果てて、店長に相談した。
店長は面倒なことに関わって火の粉をかぶりたくないので、そのまま上司であるエリア長に事の次第を報告した。
「今の店長は自分で判断するのが苦手で、嫌なのかすぐに上に報告して責任を逃れる。こんな問題をいちいち上に上げてこないで、自分で判断して処理しろ、といいたい。結局こんな問題までをエリア長が処理しなければならない」(同ホール関係者)
アルバイト社員の女の子はアタックされて嫌がっているのだから、下手すればパワハラにもなり兼ねない。
A社は社員教育もあまり行われていないので、店長になってもこんな問題が処理できない。
「アタックした社員には、『猛烈にアタックしていいのは学生まで。社会人になったら節度を持って行動しろ』と厳重注意して、アルバイト社員にはその旨を伝えるだけでも、店長の心証が違ってくるのに、そんな簡単なこともできない。一度店長教育も行わなければならない」(同)と嘆く。
元を糺せば、行き着くところは経営者の姿勢だ。同じ会社でも分社化によって業績だけでなく、社員の質にまで差が出ている。
たいした経営努力をしなくても売り上げが上がった時代は遠の昔に終わっている。最終的には経営者の質で生き残れる時代になってきた。