自然冷媒を入れ替えても電気代は下がらない
夏になってからでは遅いのだが、本格的に暑くなって初めて電気代を落とすことにも本腰が入るというもの。今、業界で蠢いているのが自然冷媒商法だ。これは現在使っているエアコンのフロンガスを自然冷媒に入れ替えるだけで、コンプレッサーの圧力が下がることで、電気代が最大で50%も下がる、とホールに営業をかけている業者が急増していた。
オゾン層破壊につながるフロンガスは、先進国では2020年まで、発展途上国では2030年までに生産が中止することが、モントリオール議定書で決定している。フロンガスに代わる次世代のガスが、自然冷媒ガスだ。現在のところ自然冷媒に対応しているのは、大型の冷凍倉庫やコンビニの冷凍・冷蔵ショーケースで、自然冷媒対応のエアコンはまだ生産されていない。
地球環境にも優しい自然冷媒は、環境省や経産省が自然冷媒に対応した機器の導入を推奨していることは確かで、自然冷媒に対応した冷凍倉庫や冷凍・冷蔵ショーケースを導入した企業には、導入費の一部を環境省から助成してもらう制度もある。
省庁が自然冷媒を推奨していることを巧みに利用して、現在使っているエアコンのフロンガスを自然冷媒に入れ替えたら、電気代が下がり、地球環境にも優しい、と営業に回っている業者は、詐欺か詐欺の片棒を担がされているので、ホールは十分注意しなければならない。
しかも、業界では名の通った設備屋や販社が噛んでいるケースが多い。両社とも機械や設備が売れない時代に、よく調べもしないで自然冷媒に飛びついたようだ。
フロンガス対応のエアコンに自然冷媒を入れ替えたらどうなるのか?
車を例えるとガソリン仕様車に軽油を入れるようなもの。そもそも現在使われているエアコンは自然冷媒ガスに対応していないので、機器の故障の原因になると共に、メーカー保証も受けられなくなる。
実際に自然冷媒ガスに入れ替えたホールでは、コンプレッサーの圧力が上がらないために、モーターが回りっぱなしになり、逆に電気代が上がったケースも報告されている。
名前を使われた経産省や環境省はホームページ上で、各省庁が自然冷媒に入れ替える指示をしていない、省庁の名を騙る企業と省庁は一切関係がない、と注意喚起を促している。
また、社団法人日本冷凍空調工業会も指定された冷媒以外のものは、火災や爆発にもつながることから、一切使用しないことを呼び掛けている。
自然冷媒で電気代が下がる、というのは詐欺なので、くれぐれも引っかからないように。
ちなみに、500台クラスでガスの入れ替え費用は1000万円ほど。裁判になったケースもあるが、契約書には署名、捺印しているために、痛み分け。全額は戻ってこなかった。