褒める職場で離職率を防ぐ
会社で褒めることがブームになっている、という。そんな番組をNHKがやっていた。その背景にはアメリカ型の成果主義が行き詰ったことなどが挙げられる。そもそも終身雇用制が崩壊し、アメリカ型のトップダウン経営を導入して日本はおかしくなった。
トップダウン型ではノルマが達成できたかどうかだけが評価対象になり、できなければ叱られる。仕事はやらされるものとなり、仕事することが楽しくなくなる。終身雇用制時代の日本の企業は、ボトムアップ型で、サラリーマンは仕事に遣り甲斐を持って働いていた。
これだけ世の中が不況で閉塞感が漂うと、ちょっとした褒め言葉が励みになり、ポジティブになれる。
こういうご時世で生まれたのが褒めることを専門にする会社だ。どういうことかというと、これは覆面調査会社なのだが、たとえば、依頼された飲食店に覆面調査にでかける。もちろん、店員はその客が覆面調査員であることは知らない。
調査員が店員に「この刺身は何切れあるの?」と聞いたところ店員は即座に答えられなかった。普通ならこれは減点対象となるが、店員はすぐさま調理場へ走り、聞いてきた。
この調査会社はすぐに聞きに行ったことを逆に褒める。
店員のダメなところをあら捜しするのではなく、笑顔がよかったとか、あいさつが元気だったとか褒めるところを見つけて報告書を作成する。
A4で22ページの報告書の最後に「料理が出るスピードが遅い」と欠点を指摘した。
店員は褒められる報告書を読んでいるので、気持ちがいいから、料理が遅いことに対するアイデアをスタッフ同士で練ることができた。
その結果、生まれたのがスピードメニューの開発である。褒められるとやる気が出て、頑張れる、ということで、褒める覆面調査の結果、売り上げが2割アップした、という。
褒められる効果をMRIで科学的にも立証している。
褒められると脳の中心部で線条体が活発化することが分かった。これは金銭をもらうときと一緒の反応で、金銭と褒められることは他者から認められることであり、集団でしか生きられない人間には重要なことなのだ。
あるクレジット会社では褒めあいカードを作って、同僚を褒めている。見たことを褒めてカードに書くわけだ。
なぜ、そんなことをはじめたのか?
この会社は社員、契約社員、アルバイトと立場がバラバラで職場に一体感がなく、見てみない振りをしたり、一人一人が孤立して離職率も高かったため、定着率をよくするために褒めあいカードを導入した。
褒めるためには、褒める材料を探さなければいけないので、互いが理解するようになる。その結果、一体感が生まれ、助け合うことが当たり前になりその帰結として離職率も下がった。
褒めるためには相手をしっかり見ていないといけない。褒めることは「認められること」でこれが一番重要なポイントである。ただ、褒めるばかりではダメで5つ褒めて1つ叱る5対1理論が必要になる。
人間は認められて、褒められて、報酬がもらえると潜在的能力も含めて最大限の力を発揮する。おカネだけではない、ということだ。
離職率の高いパチンコ業界でも、この褒め文化を取り入れるホール企業が増えてきている。