近視眼的思考では4円の稼働は上げられない
ホールの役職者クラスが読んでいるパチンコ業界サイトで、一番関心が薄い記事は、ズバリ、社員教育に関するものだ。役職者ともなると目の前の稼働を上げることばかりに関心が行きがちなので、稼働アップに結び付かない記事はスルーされる傾向がある。
これを近視眼的思考という。
ホール店長は近視眼的思考が蔓延している。イベント屋に頼んで朝の並びが何百人、何千人並んだ、とそんなことばかりに関心が向かっている。イベントで動くユーザーをいくら動員しようとも、それは自店の固定客にはならない。その日の賑やかしで終始するだけだ。
物事の本質や大局を見通せず、目先のことだけにとらわれているから、いつまで経っても業界は4円の稼働を上げることができない。
では、稼働を上げる要素は何かと問えば、業界人は「遊技機」と答えるだろう。全く見当はずれの答えではないが、それを使いこなすのは誰かと言えば、ヒトである。
どんなに素晴らしいスペックの遊技機でも、スタートを閉め、ベタピンでは稼働するはずの遊技機も本来の面白さを伝えることができず、稼働は上がらない。
先日、野外研修を取材した。この研修のウリは、座学による研修よりも離職率が低下する、内定者辞退者が激減する、従業員同士のチーム力が向上する、社内風土が改善され業績に影響する、というものだった。
野外で遊びを取り入れた研修からコミュニケーションやリーダーシップを学んでいく。
例えば、こんなミッションがある。一辺が20センチほどの小さな板の上に乗って、制限時間内に歌を1曲歌い終える、という課題がある。クリアする条件は、板はつなげ離してはいけない。踵が付いたりするとアウト! 1人がやっと乗れる幅で7人の場合は、まず4本でスタートする。クリアするごとに板の数を減らしていく。
初対面の者同士が難題をクリアするために、自然発生的に会話が始まる。意見を出し合うようになるまで時間はかからなかった。このチームでは7人で3本まで乗ることに成功した。
2本に7人が乗る挑戦に何度も失敗した時、初めて講師からのアドバイスがあった。
これまでの記録は10人で1本に乗ることに成功した事例を挙げた。
10人で1本に乗ることに成功したチームの秘訣は、ズバリ作戦会議だった。リーダー的存在の者が出て、タイムキーパーや他チームの偵察部隊などの役割分担を決めた。歌も1曲歌うというだけだから、曲が短くて早口で歌うことで時間短縮するなど、計画を練った。
このアドバイスをヒントにしたが、2本に成功することはできなかった。
この課題では本質を煮詰めてディスカッションして、役割分担を決め、それを取りまとめるリーダーの存在を学んでいくことだった。
知識だけを詰め込む座学は2日経てば忘れてしまうが、遊びの中から学ぶ野外研修は、物事の本質が理解できるようになる。学んだことの「種」となる部分を会社に持ち帰って、無理のないことを毎日実行していくところが大きな違いだ。毎日続けることで21日続けるとそれが習慣化される。
これまでできていなかったことが、全社を挙げてできるようになるだけでも、ベクトルを合わせることができる。その中から、4円の稼働を上げる人材も生まれてくるというものだ。