開業迫るIRが及ぼすパチンコ業界への影響
大阪・夢洲でIRを計画している大阪府、大阪市、大阪IR株式会社は、区域整備計画案が大阪府議会、大阪市議会で大阪維新の会、公明党の賛成多数で承認され、4月までに国へ申請する段階に漕ぎつけた。晴れて国からのGOサインが出れば、2023年の春に着工し、2029年秋以降の開業を目指す。
パチンコ業界的な関心事で言えば、カジノ施設の1階には6400台のスロットマシンが設置される予定だ。業界的に表現するならば「夢洲に6400台の超大型スロ専誕生」となる。カジノを運営するMGMとオリックスによると、当初のインバウンド客が見込めなくなり、「今は全員日本人客を前提に日本人だけでどれだけ回るかを基にプランニングを作っている」と述べている。
つまり、カジノ側が狙っているのはホールのスロット客をターゲットにしていることが分かる。
では、ターゲットとされている遊技客はどう捉えているのか? 元スロプロはこう話す。
「結論から言うと私なら行くと思います。前提条件は一般人もプロも一緒なので、初期段階で参入してみるのが重要だと考えます。カジノでどれくらいの金額が実際に動くかという点では不確実性がありますが、投資として入場料の6000円が出せないという判断には至らないと思います。マイナンバーも作ります。なぜなら、最初に行くから先行者利益がある。実際に打つかは別ですが、法則性を測れたりはするとは思うので、実際に目で見るのが重要だと考えています。カジノ側も最初は出すと思いますので、うま味はあると思います。勝てるとなれば、リスクヘッジをしてでもやります」
ラスベガスのスロットマシンのトップクラスの還元率は約93%だ。この還元率と日本のパチスロの機械割とは意味合いが少し違う。例えば還元率が98%のスロットマシンでは、100ドルの賭け金のうち2ドルは胴元の取り分で、98ドルは還元できる。
一方のパチスロの機械割は98%のパチスロでは、10000ゲームを消化すると3枚×10000回=3万枚メダルが投入される。機械割り98%なら、2万9400枚の払い出しが期待できるという意味だ。
入場料を払ってでもパチスロよりも勝てるとなれば、フットワークの軽いスロッターはカジノへ流れる可能性はある。おそらく、オープン当初は集客する必要があるので、還元率は相当高めに持ってくることが予想される。それはスロプロが指摘する先行者利益というものだ。
回胴王決定戦で優勝しラスベガスへ行ったS氏はこう見る。
「日本のパチ屋にあるスロットと、カジノに置いてあるスロットは全く別物なので行くことも期待することもありません。 実際にカジノでスロットを打ったことがありますが、全然面白くなかった。 カジノスロットは1発当たればデカいかもしれませんが、ただの作業。 一方、日本のスロットは自分の考えと技術と経験で攻略できる要素があります。あんなに作り込まれているゲームはなかなかない」
ラスベガスフリークだった業界関係者は、9対1の割合でテーブルゲーム派。スロットはあまり打つことはなかった。
「メガバックスは全米のカジノとオンラインでつながっているので、億単位の金額で勝つことはあるけど、それは宝くじのようなもの。1回が3ドルで1000ドルから1300ドル出るスロットが人気だった。日本のパチスロは目押しなどの技術介入ができるので、面白い。スロットはレートの高さに魅力を感じる人もいるが、ボタンを押し自動で止まるのを待つだけで面白くもなんともない。パチンコよりつまらない」
一方、遊技客をターゲットにされる大阪のホールは、「カジノと同等の射幸性の機械を好んで打つお客様は、現在では相当少ないと見ます。また、国内の人は入場料が取られる。わざわざカジノに行く人はわずか」とホールの影響は限定的と見る声が多数だ。中にはカジノもオンラインの時代で「ハコモノの時代ではない」とする意見もあった。
MGMの思惑通り、日本人客を獲得できるかどうかはスロットの還元率とゲーム性だ。収益の柱はテーブルゲームで億単位を使うVIPにかかっている。