メーカーが一番恐れているのはホールが団結すること
「ホールとメーカーは車の両輪」といわれていたのは、20~30年以上も前の話で、当時のホール組合の総会でよく聞いたフレーズだ。まさに持ちつ持たれつの関係が存在していた、という証だ。
ところが、今の関係は完全にメーカー優位の状態が続いたまま。ホールは買う側であり、メーカーからすればホールはお客様のはずなのに、「この機械が欲しければ、あれもこれも買え」とメーカーは至って強気だ。パチンコ業界は売り手と買い手の立場が完全に逆転して久しい。
メーカー優位になったのは1999年2月に発売された「CR海物語」がターニングポイントになった、ともいわれている。今でも海シリーズはホールの固定島になっているように、ロングセラー商品となっている。
客付きがよく、売り上げも上がるとなれば、ホールは競って海物語を導入した。メーカーにも生産台数に限りがあるので、ホールはメーカーの営業マンに接待攻勢をかけて1台でも多く、自店に導入してもらおうとした。強引オーナーともなるとメーカーの営業マンを軟禁して、自店への割り当てを増やした。
売れる機械を作れば、作るほどメーカー優位の状況が生まれ始めた。それまで、2~3流メーカーが一発、二発とヒット機種を出すと、一流メーカーのように機歴販売を始めるようになる。
ホールにすればヒット機種で儲けさせてもらった夢が忘れられない。話題の新機種は是が非でも導入したい。そのためにはメーカーの言いなりになって、ついつい不必要な機械まで買わされてしまう。
販社でありながらメーカー機能も持つF社は、販売する機種すべてがヒットするわけではない。大人気のシリーズは第8弾まで発売されている機種もあるが、中には大コケするシリーズも何度かあった。それでもホールから文句が出ないのは、同社がコンサルティング営業で伸びてきたからだ。
「いいものはいい、悪いものは悪い。ホールの利益やメリットのあるものを紹介してきた。それこそ、自分たちで営業資料を作ってまで、いいものをホールに紹介している。ホールと営業マンの人間関係が出来上がっているので、自社が総発の機械がコケてもホールからそんなに文句はいわれない」と分析するのは事情通。
それはさておき、ホールとメーカーの逆転現象を打開する方法はないのか?
これに応えてくれたのがメーカー関係者だ。
「メーカーの弱点はズバリ、ホールさんが機械を買わないことです。サミットで新台入れ替えを全国で自粛したことがありましたが、ああいうのは堪えるものです。大手ほど機械代を抑える傾向にありますから、ホールさんが買わないことが一番怖いことです」
こんなメーカーの弱点をさらけ出すのは、ホール組合が全力で機械の不買運動など絶対に行わない、という確信があるからだ。
「ホールが団結しない限り強くならないし、メーカーは怖くはありません」
言われっ放しでいいわけがない。ホールの大同団結も昔から言われてきたフレーズだが、団結するのは「今でしょう」
今年の流行語大賞に「今でしょう」はノミネートされているようだが、年内に団結しないと流行遅れにもなる。